秋の収穫のおはなし
連載:シチシチムジクイ 島の暮らし
西表島在住のクラシライター:nijisuzumeさんより、自然の移り変わりや植物のサイクルに合わせたものづくり〈シチシチムジクイ〉をお届けします。
10月も後半に差し掛かって霜降を迎え、ようやく島も涼しくなってきました。(とはいえ日中の気温は25度程度、まだ十分半袖で過ごせる気候です) それと同時に、さまざまな植物の実たちが赤く熟し始めました。
島のおばあに昔、満月の時は実ものを、新月の時は根ものを収穫すると良いと教わったことがあります。植物の水分だったり栄養分だったりが、満月の時は上に、新月の時は下へと向かうようです。そこで、10月のハンターズムーンと呼ばれる満月の日に合わせて、さまざまな赤い実たちを収穫しました。
まずはコーヒーチェリーと呼ばれる珈琲の実。すべすべした楕円形の実の中にはパーチメントという薄くて丈夫な皮に包まれた状態で、珈琲豆が二つずつ合わさるようにして入っています。
コーヒーチェリーの赤い実の部分は、少し硬いけれど甘いので、食べることもできます。
収穫したコーヒーチェリーの中から、パーチメントに包まれた珈琲豆を取り出して乾燥させます。乾燥させたものがたくさんになったら、パーチメントを外して珈琲の生豆を取り出し、焙煎して珈琲として飲むのが楽しみです。
月桃の実は、まるで葡萄のような フサの状態でたわわに実ります。一年のうちでもこの時期にしか収穫することができないのと、実をつけ終えた月桃は枯れて倒れてしまうので、月桃の実が赤く熟したものから収穫するようにしています。
刈り取った月桃の実はフサから一粒一粒外して、綺麗に洗い、汚れのつきやすいヒダの部分を取り除いたら、天日干しします。お茶にもできるしスパイスにもなる月桃の実。しっかりと乾燥させて瓶で保存しておけば、長い期間保存も効きます。
結実しにくいことで有名な熊竹蘭も、今年は台風直撃の被害を免れたためか、珍しくたくさんの赤い実を実らせてくれました。熊竹蘭は月桃とそっくりの姿形をしていて、よほど詳しくないと見分けることが難しいくらいです。村のおばあが、熊竹蘭の葉を月桃のメス、月桃の葉を月桃のオスなどと呼び、「メスの葉っぱの方が葉が大きいからムーチー(餅)を包むのに上等さー」なんて言うように、ほぼ月桃と同じように用いられています。
なのでこちらの熊竹蘭の実も、乾燥させて保存しておき、月桃と同じようにお茶にしていただこうと思います。
本州ではもうすでに真っ赤な実をたわわに実らせていると聞く、ハイビスカスローゼル。我が家のローゼルは、ぐんぐん育って人の背丈を優に越え、ようやく最近になって小さな蕾をつけたところ。赤く色づくまでにはまだまだしばらくかかりそうです。
こちらもやはり台風の被害を受けずに大きく育つことができたので、今年は過去最高レベルの収量が見込めそうです。たくさん収穫できたら、ジャムやお茶や塩漬けにして楽しもうと思っています。
涼しくなり エサとなる虫が少なくなってくる時期に、鳥たちに見つけてもらって、鳥たちに食べてもらって、より遠くに種を運んでもらえるように、秋の果実は赤い色の実へと進化を遂げたと言われます。
珈琲の実、月桃の実、熊竹蘭の実。本州では林檎、そしてローゼル。真っ赤な果実を収穫しながら、長い夏もようやく終わり、秋が来たのだなぁとしみじみと感じています。
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