ローゼルのおはなし
連載:シチシチムジクイ 島の暮らし
西表島在住のクラシライター:nijisuzumeさんより、自然の移り変わりや植物のサイクルに合わせたものづくり〈シチシチムジクイ〉をお届けします。
南国西表島では、今がちょうどローゼルの実収穫の時期です。ローゼルは、エジプト原産のハイビスカスローゼルという植物で、真っ赤に熟した実の外側の部分をお茶などにします。ハイビスカスティーとして一般的によく知られるハイビスカスローゼルは、その名ゆえに、花の部分をお茶にするものだと誤解されがちですが、お茶にするのは花ではなく、種の外側を覆っているガクのような部分です。
わが家のローゼルは15年以上前に、当時わが家の真向かいに住んでいたおばあから譲り受けた種を、毎年毎年継いできたもの。今やこぼれ種で、自然に時期がくると芽が出るまでになりました。
4、5月頃に自然発芽したローゼルは、エジプト原産だけあって、照りつける太陽をものともせず、多少の干ばつもへっちゃらで、夏の強い日差しの中でぐんぐん育ち、秋になると人の身長を超えるくらいの高さまでに成長します。
秋になり涼しくなると、ローゼルの真っ赤な実が次々と実り始めるので、ちょうど良い大きさに育ったローゼルから順次収穫します。その際に、手間はかかるのですが、実を丸ごともぎ取るのではなく、種の外側の部分だけを収穫するようにすると、茎に残された種がやがて黒く熟して土に落ち、また来年自然に芽を出してくれます。
収穫したローゼルの実は、細く裂いてよく洗い、自然乾燥させてお茶にします。乾燥させたローゼルに湯を注ぐと、ハイビスカスティーという名で知られる、酸味のある赤い色のお茶となります。
ローゼルにはお茶以外にも活用法がいくつもあり、塩漬けにして梅干しのように利用したり、シロップにしたり、ジャムにしたりできます。毎年この時期には、友人たちが山のように林檎を送ってくれるので、今が旬のローゼルと合わせて、ローゼル林檎ジャムを作ります。ローゼルだけで作ったジャムは、酸味が強めに仕上がりますが、林檎と合わせることによって酸味が抑えられ、子どもにも人気な美味しいジャムになります。
*分量はローゼルや林檎の量によって変わるので手順のみ載せます。 ◻︎ローゼルを蓋つき土鍋に入れ、蓋をして弱火でゆっくりと加熱する。(水は加えずにローゼルの水気のみで蒸す。) ◻︎ローゼルが柔らかくなったら、ハンドミキサーなどでペースト状にする。(トゲトゲした部分がそのまま残ってしまって、見栄えが悪くならないようにするため。) ◻︎ペースト状にしたローゼルの中に細かく切った林檎を入れる。(ローゼルと林檎の割合は 1:3 くらい。) ◻︎水分は林檎から出るので加えず、弱火で加熱する。 ◻︎林檎が柔らかく煮えたら、きび砂糖をちょうど良い甘さになるまで加える。 ◻︎煮沸消毒した瓶に詰める。 |
最高に美味しいジャムの組み合わせ、ローゼルと林檎。もしローゼルと林檎が同時に手に入ったならば、ぜひ作ってみて下さいね!