月桃染めのおはなし〜月桃の色を布に移す草木染め〜

更新日:2026.05.16 | 公開日:2026.05.10
nijisuzume

連載:シチシチムジクイ 島の暮らし
西表島在住のクラシライター:nijisuzumeさん(Instagram)より、自然の移り変わりや植物のサイクルに合わせたものづくり〈シチシチムジクイ〉をお届けします。

 沖縄はひと足先に梅雨入りとなりました。雨に潤う季節の中、島のあちこちでは月桃の花がたわわに咲き溢れています

月桃の花
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 庭の片隅の日当たりがあまり良くないところで育っていた月桃は、日差しを求めてなのか約3メートルほどのかなりの背丈に育っていました。ところが背丈の割にヒョロヒョロと細かったためか、先日の雨と風で手前の月桃が大きく倒れ、小径を塞いでしまいました。

倒れてしまった月桃

 道が通れるようにと刈り取った月桃は、いつもなら小径の脇に積んで土に還すのですが、まだ花咲く前の蕾を内包していたものまでも刈り取ってしまったことが心苦しくもあり、土に還す前に月桃染めを試みようと思いたちました。

✔︎ 月桃を煮出して染液をつくる

細かく刻んだ月桃

 まず月桃を細かく刻み、大きめの鍋に刻んだ月桃と、月桃がひたひたに浸るくらいの水を入れてコトコトと煮出します。ちなみに我が家には庭に手製の竈門(かまど)があるので、ガス台ではなく竈門で薪の火を焚いて煮出しました。
 大切な月桃素材。しっかりとじっくりと月桃から染液をいただきたかったので、水が少なくなったらまた足して、少なくなったらまた足してを繰り返しながら、夕方から夜になるまで煮出し続け、さらに余熱の中そのまま一晩置きました。

染液を煮出した月桃

 夜の間にじっくりと抽出された月桃染料を、翌朝ザルで濾して染液を取り出しました。どうやら月桃の色はしっかりと染液に移されたようで、真っ赤な色鮮やかな月桃の色の染液が現れました

✔︎ 月桃の色を布に移す

記事によって違う染まり方

 竈門に火を入れて月桃の染液を熱した後、染めたい服や布を染液に浸して熱しながら染めます。絹布、木綿、リネン、同じ染液に浸したというのに、生地によって全く染まり方が異なることが面白く、不思議でもあります。
 火を止めた後も、ムラにならないように時々撹拌しながら、染液が冷めるまで服や布を染液に浸しておきます。

染めた布を海に晒す

 染液が冷めて、程よく染まったと思えたタイミングで、布や服を取り出してよく絞った後、海に晒しに行きます。海水には塩化ナトリウムをはじめ、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カリウムといった天然のミネラルが含まれています。海晒しは、そういった海水のミネラル成分による媒染のため、色止めのために行います。(とはいえ海に含まれるミネラル成分は微量です。私のような、単なる暮らしのための染めの場合はこれでも良いのですが、本格的に草木染めをする方々は、媒染液を用いてしっかりと色止めしておられます)

月桃からいただいたあたたかなピンク色

 月桃からいただいた色は優しいピンクを基調としたあたたかな色でした。

「植物の中から引き離すようにして
 液体となった色彩は、植物の命」

 染織家である志村ふくみさんの言葉を胸に、月桃からいただいた色、大切に身に纏いたいものです。

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