クミスクチンのおはなし

2024.11.10
nijisuzume

連載:シチシチムジクイ 島の暮らし
西表島在住のクラシライター:nijisuzumeさんより、自然の移り変わりや植物のサイクルに合わせたものづくり〈シチシチムジクイ〉をお届けします。

 11月に入って暦の上では立冬を迎えてめっきりと涼しくなると同時に、島ではクミスクチンの華やかな白い花が花開くようになりました。沖縄では腎臓の薬草としてよく知られているクミスクチン。実は長いことずっとクミスクチンという名前は沖縄方言の名前だと思っていたのですが、調べてみると、クミスがヒゲ、クチンが猫、つまり猫のヒゲという意味のマレー語なのだそうです。確かに長く伸びる白く細長いおしべが、まるで猫のヒゲのようです。


 こちらのクミスクチン、沖縄ではお茶として飲まれることが1番ポピュラーな使われ方で、乾燥させた葉がクミスクチン茶として販売されています。
 ただ、腎臓の薬草として有名なこちらのクミスクチンなのですが、ほのかに苦味があり、単独では少々飲みにくいのです。そのため我が家では、いくつかのほかの薬草やハーブと一緒に合わせてフレッシュハーブティーとして淹れることで、飲みやすくしています。


 よく合わせるのはフーチバ(よもぎ)です。フーチバの甘味のある爽やかな香りのおかげで、だいぶ飲みやすくなります。また、蝶豆(バタフライピー)の花があるときはそちらを加えることも。ほんのりと青みがかった緑色のハーブティーとなり、目を楽しませてくれます。

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 我が家ではクミスクチンも常に生のフレッシュなものが手に入るので、摘みたてのクミスクチンの花と葉を外し、茎の部分は薬効が抽出しやすいように、ポキポキ折って細かくしておきます。(この時に下の方の太くて固い茎の部分を取り除いておきます。)


 フレッシュハーブティーの淹れ方は二通りあって、一つ目は用意したフレッシュハーブをガラスポットに入れ、そこに沸騰した熱い湯を注いで少々蒸らすという淹れ方です。こちらの淹れ方のほうが色も美しく、爽やかで飲みやすいです。(写真は一つ目の淹れ方)
 二つ目は、鍋に水とフレッシュハーブを入れてコトコトと煮出す淹れ方。こちらは褐色がかった色となりますが、ハーブや薬草の成分が抽出されて、効能はより高いものとなるとされています。


 そうしてお茶を楽しんだあとは、フレッシュハーブティーを淹れた時に取り除いておいていた、クミスクチンの太くて固い茎の部分の挿し木をします。
 クミスクチンは土に差しておくだけで簡単に挿し木として増やすことができます。なのでいつも、全てをお茶に入れることはせず、残しておいた枝を、庭の色々な場所に挿し木して、クミスクチンが絶えてしまわないようにしています。

 庭の植物たちを観察していると、ずっと何年も何十年も同じところで育て続けると、元気がなくなっていったり、枯れていってしまったりすることがあります。植物は自分で歩いて引越しすることができないので、採ったときに、採った分を再び別の場所に植えるようにすることで、植物の生命の巡る庭となっていくとともに、いつまでも美味しいフレッシュハーブティーを頂けるということにも繋がると思います。

 

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