新緑色の竹べらを作る

2024.05.05
真鍋 百萌

連載:くらしの図工室byゆずの木アトリエ
日々のごはんを作るように、暮らしのものを作ったり、直したり。クラシライター:真鍋百萌さんより、「自然のものから暮らしのもの作り」のアイデアをお届けします。

 「竹を割ったような性格の人」と言いますが、意味は、「気性のさっぱりとしたさま」です。
竹を割るとき、この言葉を思い出します。
竹はご存じの通り、縦の繊維が密に走り、中は大きな中空です。
加工をするのに縦に割るときには、鉈とトンカチを使い繊維に沿って、トーントーンと、打っていきます。
最初に溝ができれば、そこから徐々に割れて、ある程度まで鉈が入ると、きれいにパカっと割れるのです。
音、手の感触、その気持ちよさは、まさにさっぱりとした、という言葉がぴったりだなと思います。


 新緑の眩しい季節、青い竹でへらを作りました。
竹は軽くて加工しやすいし、なめらかで綺麗な木肌、手に入りやすく丈夫な素材です。
竹細工用には、一年のうち、冬の間の水分が少なく成長が穏やかな時期に収穫します。
春以降の竹は、筍を作るため、またぐんと成長するため、土からたくさんの養分や水分を集めます。
その分柔らかく、加工するのには痛みやすかったり、強度が足りないのです。


 自宅から自転車で40分ほどのところに、代々竹素材や竹かごを扱うお店があります。
今は亡き先代が作られた丈夫な農作業用の竹かご、同じく多摩地区で竹細工をさせる職人さんの美しい竹かごなどが店いっぱい、裏にはたくさんの竹素材が並びます。
品物や素材を見せてもらいながら、竹の知識や多摩地域の竹屋さんの話を伺うのが楽しいです。
ホームセンターでも竹を買うことはできますが、やはりこちらで求めたいという気持ちになります。

 5月は筍のシーズンが終わり、これから竹はぐんぐん成長していきます。
他の木に比べても成長が早く、繁殖力の強い竹です。
アウトドアではこれからの季節、水分を含んだ収穫したばかりの竹を飯盒にして火にかけ、ご飯を炊く、という楽しみ方もあります。
竹の香りのご飯が炊けるそうです。

 日本中にある竹は、きっと昔から便利な素材として家の裏に植えられ、使われてきたのでしょう。
便利なものが増えたり、人口減少によって管理されなくなった竹林が各地で問題になっていますが、改めて日本人に身近な竹という素材の魅力を知って、暮らしに生かしていきたいと思っています。


使うほど馴染んでいく、経年変化を楽しむ竹べら作り

材料:真竹または孟宗竹(直径10cm以上がおすすめ)
道具:糸鋸(あれば)、鉈、トンカチ、のみ、ナイフ、彫刻刀、紙やすりなど。

※竹の繊維は強く尖っているので、エプロンをしたり、目の詰まった衣服を着て作業してください。
ニットやジャージなどは引っ掛かり易く、一度繊維が入るとなかなか取れません。

1,作りたいへらの形を考え、ある程度まで切った竹にマジックで下描きする

2,糸鋸でカットする 糸鋸が無ければ、のこぎりで大まかにカットする


3,のみとトンカチ、ナイフで粗削りする


4,ナイフと彫刻刀で削る


5,紙やすりで磨いて仕上げる

 

 

完成したへらは、調理で使用後なるべく早くたわしで洗い、乾かせば、長持ちします。
青竹色を残して作った竹のへらは、使いながら、ゆっくりと退色して落ち着いた色になっていきます。
また、使うほどに手に馴染み、料理の油分がしみ込んで使いやすくなります。
去年作った菜箸と調味料用の小さじ、毎日使って、よい雰囲気です。


使いながら、もっと角が丸かったら、柄が短かったら、、と次に作る形を考えるのも楽しいです。

クラシコサエルでは、竹を完全発酵させて作るメンマを使ったワークショップも開催されるそうですね。
竹の魅力は、まだまだ奥が深いです。
「竹を割ったような性格の人」に憧れつつ、今年も竹を割りたいと思います。

 

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