アーサのおはなし


連載:シチシチムジクイ 島の暮らし
西表島在住のクラシライター:nijisuzumeさん(Instagram)より、自然の移り変わりや植物のサイクルに合わせたものづくり〈シチシチムジクイ〉をお届けします。
1月下旬、まだまだ日本各地には雪に閉ざされた地域もある中、島では寒緋桜の桃色の花がぽつりぽつりと綻び始め、一足早く春がやってきました。

そんなある日の夕方、歩いてすぐのいつもの海辺に海水を汲みにいくと‥
いつもはゴツゴツとした黒褐色の岩が、一面鮮やかな緑色に覆われていて、アーサの季節がやって来ていました。

アーサというのは、アオサ、アオサノリとも呼ばれる岩場に自生する海藻で、島では採ったアーサを、アーサ汁にしたり、アーサの天ぷらにして食べます。アーサを乾燥させたものはスーパーにも並んでおり、沖縄では馴染みの食材です。

本来であれば、アーサ採りは潮が満ちているときの方が、砂を落としやすいので適しています。ですが、夕餉のためのアーサ汁としてであるならば、ほんの少しだけあれば事足ります。それに、一見少しだけに見えるアーサも、汁に入れるとふわぁっと広がるのです。なので、岩場に生えていたアーサをほんのひとつまみだけ採って帰ってきました。

採ってきたアーサはザルを使ってよく洗います。引き潮の時に、岩場にへばりついている状態のアーサは、どうしても砂まみれになってしまっているので、ザルを使って砂を落とす必要があるのです。
島豆腐のお汁を作ったら、熱々のお汁をお椀によそってからアーサを加えます。火を入れすぎてしまうと、せっかくのアーサの若草色が、台無しになってしまうので、お椀によそった熱々のお汁の予熱でアーサに火が通るようにします。
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旬の食材を旬の季節にいただくことができる。それは、海が近くにある暮らしゆえの豊かさであり、恵まれた暮らしだと思います。
そんな暮らしが来年の春にも、再来年の春にも、もっとずっと未来にも続きますように。
そのためにも、決して採りすぎるのではなく、必要なものを必要なだけ海から山から自然からいただく、ということが大切なのではないかと思います。
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