器のおはなし〜素材と質感から考える、日々の器の使い分け方〜

公開日:2026.02.08
nijisuzume

連載:シチシチムジクイ 島の暮らし
西表島在住のクラシライター:nijisuzumeさん(Instagram)より、自然の移り変わりや植物のサイクルに合わせたものづくり〈シチシチムジクイ〉をお届けします。

「どの器でいただこうか」

 そんな小さな問いが、日々の暮らしを静かに豊かにしてくれます。  
 選ぶことは自分と向き合うこと。庭に出て植物の香りを感じながら、その日の体調に合わせてお茶にするためのハーブや野草を摘むことも、その日の気分で着る服を決めることも、淹れたお茶をどんな器でいただくか迷うこともみんな同じで、今必要とするものを選びとることは、自分と向き合うことでもあると思っています。

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✔︎ やちむんの器

 「やちむん」というのは「やきもの」の訛った言い方で、沖縄の焼き物(陶器)のことです。白化粧に呉須(青い釉薬)や飴色で描かれる、のびやかな文様が特徴で、日々の暮らしの中で気兼ねなく使える器として親しまれてきました。使い込むほどに色味や質感が変わっていく、大らかなところもやちむんの魅力のひとつ。

 そんなやちむんの器は、気楽に日常使いをする時にちょうどよいので、さんぴん茶や麦茶を淹れてさっと飲みたい時や、外の畑作業の際にお盆に載せて気軽に持ち出したりなど、日常的にどしどし使っています。

やちむんの器

✔︎ 作家ものの器

 陶芸家や工芸作家さんがひとつひとつ手仕事で制作した作家ものの器。成形から釉薬がけ、焼成までを同じ作家が手がけるため、形や色合い、厚みにはわずかな個体差が生まれます。その不均一さが、作家ものならではの表情となり、使う人の感覚に寄り添います。量産の器にはない味があります。

 作り手の個性によって様々な魅力と味わいのある作家ものの器は、珈琲、紅茶、緑茶、ハーブティー、などの淹れるものだったり、その場の雰囲気だったりに合わせて、気分に合わせて楽しく選んでいます

作家ものの器

✔︎ 骨董の器

 長い年月を経て受け継がれてきた古い器である骨董。多くは江戸〜明治、大正期など、かつて人々の暮らしの中で実際に使われていたものです。手仕事でつくられた器が多く、歪みや釉薬のむら、欠けや直しの跡も含めて、その器が歩んできた時間が刻まれ、新品にはない落ち着きや深みが魅力です。

 私の場合、そこまで古く高価なものは持ち合わせていませんが、その歴史の重みを思うと、扱いに気を配る必要があり、その分使う時の所作も自然と丁寧になり、背筋が伸びるような気持ちになります。なので、気持ちに張りを持たせたい時などに出して使っています。

骨董の器

✔︎ ガラスの器

 光を通し、涼やかな表情をもつガラスの器。透明感のある質感は、注いだままを映し出し、透かして見せてくれます。なかでも息を吹き込んで成形する製法でつくられる手吹ガラスは、ひとつひとつ手作業で成形されるため、厚みや形、気泡の入り方に一つひとつ違いが生まれ、同じものはなく、その揺らぎが、やわらかな表情となります。
 涼やかな印象のあるガラスの器は、お茶の美しい色を視覚的に楽しみたい時や、暑い日などにひんやりとした涼しさを感じるために手に取ることが多いです。

ガラスの器

 器を選ぶことは、その日の自分に静かに手を伸ばすことのように思います。重さや手触り、光の映り方に心を預けながら、今の自分にちょうどいい器を選ぶ。どの器を選ぶかで、味わい方や所作、過ごす時間の質までもが、ほんの少し変わっていくように感じます。

 暮らしの中で器を選ぶという小さな行為が、日々をていねいに受け取るための、ささやかな入り口になってくれたらと思います。

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