台湾老茶と栗煮のメープルシロップ
連載:一茶一菓子
クラシライター:大久保香織さんより、お茶が主役になるようなお菓子とともに、ひっそり行っているメディテーションタイムをお届けします。
すっかり涼しくなってきたこの頃。
10月に入り、寒露を迎えての一茶一菓子。
お茶は台湾茶「文山包種」の1988年のもの、お菓子は熊本産の栗をごろっと煮てメープルシロップをかけようと思います。
台湾風に茶壺(急須)の下に少し大きめの皿を敷いたセッティングです。
茶壺は、おままごとのように小さいですが、台湾の老舗店で購入した紫砂の器です。
今回は「紫砂壺(ずさふぅ)」の話を少ししたいと思います。
紫砂とは江蘇省宜興市でのみ産出する特殊な性質を持った陶土のことです。紫砂は焼成後の発色により、いくつかに分類されます。今回使用するものは少し緑がかっています。
焼成された素地に、水の粒子より小さく、空気の粒子よりは大きいという微妙なサイズの気孔が無数に存在しているのが特徴で、素地の部分は空気を多分に含んでいる状態と言え、一旦茶壷にお湯が注がれるとこの空気が温まることで、素地が保温層となって茶壷内部の温度を下がりにくくしてくれて、美味しいお茶が入ります。
また、使い込むことで、より一層美味しくお茶が入るように育てることを「養壷(やんふう)」と言い、育てると、お湯を入れただけでいつものお茶の味がするとも言われています。
私が上海に住んでお茶を習っていた時には、すべての生徒さんが紫砂に目がなく、お茶ごとにどの紫砂の茶器で入れるか分けていたりと、こだわる方にとっては茶壺を買うなら紫砂のものでないと!というくらい特別な立ち位置にあるようです。
今回のお茶は、数年前に台湾の小慢さんというお店で購入した1988年のとても古いお茶ですので、味わいも優しく、枯れた感じがあります。ゆったりと心を落ち着かせて飲みます。
さて、次はお茶に合わせるお菓子です。
数年前から栗仕事にハマっており、甘露煮に渋川煮、マロンクリームにマロンアイスクリームと色々作りましたが、1番記憶に残っているのが、工程がとてもシンプルで美味しかった栗をごろっと煮てメープルシロップをかけたものです。
|
着色用のクチナシも、みりんも塩も使わなくても十分美味しくできます。
色々なレシピより砂糖も少なめです。
その分お好みでメープルシロップで甘みを足しています。
秋の食材と相性が良い気がして、秋にはメープルの消費量が増えます。
少し枯れた味のお茶にも、旬の栗にも秋を感じる秋の一茶一菓子です。
10月の読みもの10月の暮らしや行事を楽しむアイデアや旬の食べ物に関すること(レシピ付き記事も)、11月の準備などの記事をお楽しみください♪ |