浜香のおはなし

2024.08.11
nijisuzume

連載:シチシチムジクイ 島の暮らし
西表島在住のクラシライター:nijisuzumeさんより、自然の移り変わりや植物のサイクルに合わせたものづくり〈シチシチムジクイ〉をお届けします。

 ネイティヴアメリカンの人たちが、儀式の際のスマッジングに用いていたと言われるセージの葉。そのセージを焚いた煙の香りが好きで、綺麗に掃除をした後や、新たに何かを始める時や、場を清めたい時などに焚いていました。
 けれども湿度の高い西表島は、セージの生育にはどうやら適さないようで、何度 畑にセージの種を蒔いても なかなかうまく育たず、仕方なく取り寄せ購入していました。


 歩いてすぐの浜には、白い砂浜に浜香(ハマゴウ)が根茎で縦横無尽に広がって生い茂り、ちょうど今の時期は、可愛らしい薄紫や白色の花を咲かせだ後に、小さな丸い種子を付けています。
 その浜香が、昔はお香の原料だったと聞き、その葉を乾燥させて焚いてみると‥あら不思議。焚いた時の煙の香りが、セージとよく似た清々しい香りだったのです。


 それからというもの、セージの代わりに浜香の葉を乾燥させたものを焚くようになりました。ただ、浜香の葉は小さくて、火をつけて焚く時に、一つの葉が燃えるタイミングで消えてしまうことが多く、うまく焚くことができないという問題がありました。


 そこで、浜香で円錐形のお香を試作してみることにしました。まずは浜香だけでお香を作ったのですが、うまくまとまりません。我が家の裏の森のようになっているところに自生しているタブの木を粉にしたものを合わせると、うまく円錐状の形のお香にすることができました。タブの木にはどうやら粘り気のある成分が含まれているようで、それがツナギの役目を果たしてくれているようです。


 それからというもの、セージを取り寄せることもなく、浜香とタブの木で作ったお香を、スマッジングインセンスとして用いるようになりました。また、浜香とタブの木に、好きな植物を加えてお香を作ったりもするようになりました。
 お茶をゆっくりと淹れたり、好きな音楽に身を委ねたり、人それぞれ色々な方法があるように、心地よい良い香りの煙を焚くことで、自然と呼吸が深くなり、忙しなかった自分の中の時間が呼吸とともにゆっくりと流れはじめ、それによって気持ちも整うような気がしています。

 浜香、タブの木だけでなく、月桃、カラキ(琉球シナモン)、ヤブニッケイなどの島の植物を用いた、オリジナルのお香づくりの会を企画しています。
 それぞれの植物の香りを確かめ、好きな植物を選んで、自分だけのスマッジングインセンスを作ってみたい方、是非一緒に作りましょう。

 

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