フクギの実のおはなし

公開日:2025.09.14
nijisuzume

連載:シチシチムジクイ 島の暮らし
西表島在住のクラシライター:nijisuzumeさん(Instagram)より、自然の移り変わりや植物のサイクルに合わせたものづくり〈シチシチムジクイ〉をお届けします。

 古くから沖縄では屋敷を守る防風林として植えられてきたフクギ(福木)。我が家の屋敷の周りにも、背の高いフクギが植えられていて、見上げるほどの大木に育っています。夏の終わりのちょうど今、そのフクギの木には、丸くて黄色い実がたくさん実っています。

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フクギの黄色い実

 そんなフクギの実ですが、残念ながら美味しいわけではないので、たくさん実ってもただ地面に落ちるだけ。しかも道路に落ちたフクギの実は通行する車に潰されて見るも無惨な姿になり、きれいに掃き掃除しても、また次の日にはたくさん落ちて潰れているという有様で、なかなか大変で厄介な存在なのです。沖縄ではきっと同じように竹ボウキを手に道路を掃きながら、「何とかならないものか」と思いを巡らせている人が多いはずです。

地面に落ちたフクギの実

 けれどもフクギの木は、昔から沖縄では黄金色に染まる貴重な染料とされてきたものです。フクギの木の樹皮や枝や葉が染料になるということは、フクギの実からもおそらく染められるはず。そう考えたところで、以前友人がフクギの実の中から種を取り出して染めを試みていたことを思い出し、私も試してみることにしました。

集めたフクギの種を圧力鍋でじっくりと煮出す

 思い立ったらすぐ行動。竹ボウキで道路の掃き掃除をしながら、落ちているフクギの実を集め、中から種を取り出します。落ちて車に潰されているフクギの実の種も同様に拾って集めたのですが、こちらの方が最初から潰れている分、染液を取り出すには良さそうでした。
 集めたフクギの種を圧力鍋でじっくりと煮出して、取り出した染料に木綿の布を浸して染めてみると

 …鮮やかな黄色に染まりました!

フクギの実で染めた黄色

 道路に落ちて車に潰されたフクギの実で、こんなにきれいな色に草木染めができるなんて。しかも今の季節ならではの、うんざりするようなフクギの実の掃き掃除の中に、種を拾う楽しみを見出せるなんて。

フクギの実で染めた黄色

 日々の暮らしの中で、ふと立ち止まって考えてみたり、発想を転換したりすることで、新しく見えてくる世界があります。価値が「ない」とされているものに、実は価値が「ある」というように。
 厄介者だと思っていたフクギの実も、実は豊かな恵みだったのでした。見方を変えれば、価値がないと思っていたものも、宝物に変わるのです。そんな小さな気づきを重ねながら、自然とともに暮らす日々をこれからも大切に過ごせたらと思います。

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