インド藍のおはなし|2025


連載:シチシチムジクイ 島の暮らし
西表島在住のクラシライター:nijisuzumeさん(Instagram)より、自然の移り変わりや植物のサイクルに合わせたものづくり〈シチシチムジクイ〉をお届けします。
我が家の庭には高さ2メートルほどのインド藍の木が数本生えています。インド藍というのは、和名ではナンバンコマツナギといい、熱帯、亜熱帯地方に育つマメ科の植物で、藍染の原料ともなり、高さ2メートルほどの大木に育つので木藍とも呼ばれます。

そのインド藍の木のうちの一本が、先日の警報級の大雨で、ポッキリと折れてしまいました。見ると木の高さが2メートルを超えているのに、木の上の方ばかりにたくさんの葉が広がっていました。これでは木の上部ばかりに重さが集中してしまうために、大雨を受けた時に耐えられず、重みで折れてしまうわけです。このままだとほかのインド藍の木も同じように折れてしまいそうなので、木の上の方を軽くするために枝を剪定することにしました。

剪定しようとしてよく見ると、インド藍の木の枝には黒い小さな鞘状の種がびっしりとついていました。
インド藍の種は暑い時期にならないと発芽しないと言われますから、暑くなってきた今の時期に合わせて種をつけ、それが下に落ちて散らばり、発芽するというサイクルなのでしょう。地面をよく見てみると小さなインド藍の芽がいくつも生えていました。

剪定したインド藍のほとんどは乾燥させましたが、ふと思い立ち、数枚の葉を用いて叩き染めができないか、試してみることにしました。

白い麻の布の上にインド藍の葉を並べて置いて‥

上に白の麻布を重ねて、叩く、叩く、叩く。

しっかり叩いたら葉を取り除いて‥

ゴシゴシとよく水洗いします。

空気に触れさせると酸化して青くなってきました。

「緑はその両界に 生と死のあわいに明滅する色である」
染織家である志村ふくみさんの「白のままでは生きられない」という本の中の一節にある言葉ですが、藍で染めた色が緑から青に少しずつゆっくりと色を変えていく様を目の当たりにすると、この言葉を思い起こさずにはいられません。生なる色から死する色へ。留めおくことのできない、その変わりゆく瞬間の色こそ1番美しいのではないかとさえ感じます。
一見何の変哲もない薄くて丸いインド藍の葉の中に、このような青い色が内包されているという植物の神秘。自分の暮らしのすぐ隣に存在する植物が持つ奥深い魅力に日々惹きつけられながら、今日も島で暮らしています。
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