ハンダマのおはなし


連載:シチシチムジクイ 島の暮らし
西表島在住のクラシライター:nijisuzumeさん(Instagram)より、自然の移り変わりや植物のサイクルに合わせたものづくり〈シチシチムジクイ〉をお届けします。
葉の表側は緑色なのに裏側は鮮やかな紫色、という個性的なルックスの葉野菜である水前寺菜は、沖縄ではハンダマという名で呼ばれ、親しまれています。
何年か前のこと、ハンダマは鉄分も豊富で身体にとてもいいんだよと近所のおばあから教わり、もらってきて畑に植えていたのですが、少々独特な風味とヌメリを子どもたちがあまり好まず、食べる機会がないまま植えっぱなしにして、すっかり忘れてしまっていたところ、畑に植えていたはずのハンダマが、ほかの背の高い草たちに負けてしまったのか、気づいたらいなくなっていました。

なくなってしまうと、無性に食べたくなってしまうもの。春という季節ということもあり、あの独特でほのかに苦味のある味が無性に恋しくなり、ハンダマが食べたいなあと思っていたところ、ちょうど島の無人売店で、ハンダマが売られているのを見つけました。(ハンダマが束になってたくさん入ったものが100円!でした。)

新鮮なハンダマはすぐに水洗いし、茎から葉を外します。冷蔵庫に入れてしまう前に、まずはシャキシャキの状態のハンダマの葉をざっくり刻んで生のままサラダにします。
ちょうど家にあったイワシの水煮缶詰(シーチキン缶でも◯)とざっくり刻んだハンダマの葉を和えて、行者ニンニクの醤油漬け(もちろん醤油で◯)をかけて、ハンダマのサラダの完成です。

野菜の美味しさを味わうには、何よりも鮮度が大切だと思っています。使いきれない分の葉野菜は、そのまま冷蔵庫に入れて保存するより、サッと茹でてから保存する方が、何となく葉野菜の鮮度をその瞬間のまま留めることができるような気がするので、残りのハンダマもまとめて茹でてしまいます。

茹でておいたハンダマは、すぐに白和えなどの和え物やお浸しにできます。島豆腐の味噌漬けの作り置きがあったので、豆腐のかわりにそちらで白和えにしてみると、ハンダマのクセのある風味がやわらいで、食べやすくなりました。
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さて、ハンダマの葉を外したあとの茎の部分ですが、これをこのままにしてはもったいない!
ではこちらの茎の部分、どうするかというと‥

畑に挿し木します!
実はハンダマは、茎から簡単に根が生えてくるので、挿し木で増やすのに適しています。
不思議なもので、必要とする植物はいつでも身の回りにいてくれるのに、あまり必要としなかったり、見向きもしなくなると、その植物はいつの間にか消えてしまったりします。心を傾け、心を通わせるということが、植物を相手にするときであっても、大切なことなんだろうなと思います。
せっかくまた新たにハンダマが根付いてくれたので、今度は時々ハンダマのことを思い出して、周りの草を刈ってやったり、多くなったら収穫したり、気にかけながらハンダマとともに暮らしていきたいと思っています。
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