糸芭蕉のおはなし

2024.02.25

nijisuzume

連載:シチシチムジクイ 島の暮らし
西表島在住のクラシライター:nijisuzumeさんより、自然の移り変わりや植物のサイクルに合わせたものづくり〈シチシチムジクイ〉をお届けします。

 畑の隅に植えた糸芭蕉が、ニョキニョキと竹の子のように根茎で増え、広がり、どんどんとその陣地を拡大しています。


 自由奔放に増え続けるのは良いのですが、背丈が2、3メートルになり、畑の作物に日が当たらなくなってしまうので、いくらか刈り取る必要が出てきました。


⇧ちなみにこちらは島バナナの名で知られる実芭蕉。糸芭蕉より茎と葉が柔らかであり、葉の形が違うのですが、とてもそっくりなので見分けるのはなかなか難しいです。⇩


 そんな見分けのつきにくい糸芭蕉と島バナナ(実芭蕉)ですが、島バナナの実がふっくらとして種が入っていないのに対し、糸芭蕉の実は黒くて丸い大きな種がぎっしりと詰まり、ほっそりとしていて、ほとんど果実として食べられる部分がありません。

 ちょうど今の時期は、糸芭蕉の花が咲いて実がついているので、実に着目すると糸芭蕉なのか島バナナなのかを確実に見分けることができます。


 必要に迫られて糸芭蕉を刈ることになりましたが、そんな場合であっても、糸芭蕉に刃を入れる前には必ず手を止め、祈るように 話しかけるように 約束をします。


糸芭蕉を刈らせてもらいます
決してその生命無駄にしません


 刈り取った3本の糸芭蕉の幾重にも重なる皮を丁寧にナイフで剥ぎ、柔らかく煮て、こそげ落とすように繊維を取り出します。

 全工程が手作業であるために、繊維を全て取り終えるまでに丸2日かかりました。人差し指の付け根は赤くなり、右の手首は腱鞘炎の一歩手前。それでも無駄にせずに、三本の糸芭蕉から美しい繊維を取り出すことができたことに、約束を果たせた安堵と、清々しさを感じます。


 取り出した繊維は風にあてて、自然に乾燥させます。光を纏った糸芭蕉の繊維の艶やかで美しいこと。


 糸芭蕉の繊維は美しい箒に。

 生命を頂いたからには最後まで生かしきり、決して無駄にしない。それは糸芭蕉と交わした約束なのです。

 

2月の読みもの

2月の食に関すること(レシピ付き記事も)、2月の過ごし方のアイデアや2月の準備などの記事をお楽しみください♪

月ごとの読みものまとめはこちら

 



\ PICK UP ITEM /

おすすめ商品