センダングサのおはなし
連載:シチシチムジクイ 島の暮らし
西表島在住のクラシライター:nijisuzumeさんより、自然の移り変わりや植物のサイクルに合わせたものづくり〈シチシチムジクイ〉をお届けします。
沖縄だけでなく日本各地でも見られるセンダングサ。島の子たちが学校の帰り道に、道端のセンダングサの未熟な種を取って、自分の服にくっつけたり、友達の服めがけて投げてくっつけたりして、逃げたり追いかけたり 遊びながら帰る姿は、いつ見ても微笑ましいものです。
そんな「よく見かける雑草」という位置付けのセンダングサ。身近であるがゆえに「食材」というような視点で見ることは、普段はあまりないのでは と思います。
10年くらい前、村のおばあの助手として、集落散策・薬草プログラムを行っていたことがあります。そのプログラムは、島を訪れたお客さんを案内しながら、おばあと一緒に集落内を散策し、野草・薬草・山菜・木の実などを、学びながら採取するというもの。散策から戻った後は、摘んできた野草などで料理を作り、一緒に美味しく頂きます。
そのプログラムの中でおばあが「天ぷらにしたり、白和えにすると美味しいから」といって毎回欠かさず必ず摘んでいたのが、こちらのセンダングサでした。
センダングサの天ぷらは、センダングサの柔らかい若芽の部分だけを摘んで作ります。沖縄の天ぷらは、薄力粉と卵と水とベーキングパウダーのほかに、塩などで衣に味付けをしてあるので、そのまま食べても味がしっかりついているのです。(ちなみにわが家では、天ぷらにベーキングパウダーを入れないので、沖縄特有のふっくら天ぷらではなく、サクサク天ぷらです)
「よく見かける雑草」にすぎないと思っていたセンダングサが、天ぷらや白和えにもなる、美味しい「食材」だなんて。見ていた世界が一瞬で変わるような感覚。目から鱗でした。
「食べられる野草」であるセンダングサの花を摘み 生花に熱湯を加えると、黄金色の美しいお茶となりました。少々ほろ苦さがあるので蜂蜜を加えて。
都会の暮らしでは、人の暮らしと 近くに生えている植物とが、すぐ隣にありながらも、まるで住む世界が違うかのように、見えない境界線で分かれているように感じます。
対して島の暮らしでは、自然の中に人の暮らしがあり、人の暮らしの中に植物があり、植物との距離が近いと感じます。
野菜であっても野草であっても分け隔てなく接し、歩み寄り、大らかな眼差しを向ける村のおばあの姿勢は、まさに人と植物とが同じ世界で共に生きているということの表れなのだと思います。
食べられるかな?何に使おうかな?何を作れるかな?‥日々 そんなことを考えながら島暮らしをしている私は、どうやらしっかりとおばあから、その姿勢を受け継ぐことができているようです。
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