塩を作るという暮らし

公開日:2025.03.17
中里早紀子

連載:里山暮らし日々是好日
クラシライター:中里早紀子さん(Instagram)が自然や季節とともに移ろう田舎での里山暮らしの中で見つけたものたちをお届けします。

たけのこ掘りやふきのとう探しは春に、豆板醤作りは初夏に、味噌作りやきび糖作り(製糖)は冬に、というふうに、季節ごとに楽しむことが多い里山暮らし。

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そんな中で1年を通してルーティンとなっているのが「塩を作る」ということ。塩がなくなったら作る。いたってシンプル。きっかけは何だっただろう?もう忘れてしまいましたが、きれいな海が目の前に広がる暮らしで、塩を作らないという選択肢はありませんでした。

お察しのことと思いますが、作り方もいたってシンプル。海水を汲んできて、炊くだけ。それで毎日のように使う塩が手に入る。なんと、最高じゃないですか。

✔︎ 海水から塩へ|シンプルで奥深い塩作りの工程

「塩作っちゃう?」
塩がそろそろなくなるなぁという、1日家でゆっくり過ごせそうな週末の朝、このかけ声で塩作りは突如スタートします。昼でもダメ、夕方でもダメ、朝なのです。

20リットルのタンクを担いで歩いて5分の海へ。元々とっても美しい澄んだ海水なのですが、やはり潮溜まりや波打ち際には浮遊物があるため、できるだけ外海に近くよどみのない動きがある場所で海水を汲んできます。

えっちらほっちらタンクを運んで、炊く工程へとうつります。

20リットルの海水を大きな鍋に入れ、かまどに薪をくべる。火が消えないように薪をどんどん入れ、ひたすら沸かしていきます。

沸かしている間は家の仕事をしたり、ちょっと畑仕事をしたり、コーヒーを飲んだり、しばし自由な時間。

水分がそろそろなくなってくるかなぁというのが夕方頃。うっすら塩の結晶が見えてきたら、ここからは煮詰まって焦げてしまわないように、大きな鍋をしっかり見張ります。

さっきよりも水分が少なくなってきたら、ざざっと網じゃくしで塩をすくいおおよそ完成。この段階ではまだベチョっと水分を含んでいるので、翌日天日で干したり、フライパンで炒めるようにして水分を飛ばします。

✔︎ 手作り塩の魅力|自然が生み出す味わいの奥深さ

20リットルの海水からできる塩は約600〜700g。海水の塩分濃度が3.5%なので、まぁそんなところでしょう。

味は、ツンとしたしょっぱさはなく、ちゃんと主役級に「味わえる」塩になっています。
きっと季節やお天気によっても味が変わってくるのだと思います。
物理的には非常にシンプル。海水を煮詰めるので、塩ができる。でも味はとっても深みがあり、奥行きがあるなぁと感じさせられます。

何もない、ただの無色透明な海水を煮詰めて、うっすら塩が見え始める頃の鍋の中は、ちょっとした宇宙のようで、光る塩はきらり輝く惑星のようにも見えてきます。

✔︎ 完全天日塩という選択肢|高知の伝統的な塩作り

高知では「完全天日塩」というものが多くあります。これは海水を一切の火力を使わず太陽の力だけでゆっくりゆっくり水分を蒸発させ、塩を作っていくというものです。季節ごとの湿度の違いや、夏の強い太陽と冬のじんわりした太陽では製塩の期間も違い、塩の大きさや味わいにも変化が出ます。

こちらは我が町「中土佐町」で製塩をしている「小川製塩所」さんの様子です。ずらっと並んだ箱の中に海水が入っていて、毎日お世話をしながら塩を育てていきます。

【365】完全天日塩

《PR》小川製塩所で作られています

 

太陽の軌道やその日の温度・湿度によって状況は刻々と変化するので、箱ごとにしっかり様子をみていく、まさに「塩を育てる」という言葉がぴったり。

小川さん曰く、塩=海水と思われがちだけど、山も同じくらい大切。山が近いとそれだけ山のミネラルが豊富に海に流れ込み豊かな海になり、塩作りにも大きな影響があるんだとか。

自然の恵みを享受し食糧を生み出す暮らしは、昔はきっと当たり前にあったことです。今の暮らしの中ではその自然との距離が少し遠くなってしまい、当たり前のことが忘れ去られがちではないでしょうか。タイパやコスパ、それだけでは測れない大切なものが暮らしの中にはあるのではと思います。

✔︎ 手間をかける価値|塩作りが教えてくれること

1日中延々と海水を炊く塩作り。タイパは決して良いとは言えませんが、海へ足を運び太陽や潮風を感じながら海水を汲んでくる時間も、かまどの火加減を見ながらコーヒーを飲んだり本を読んだりしてゆったり過ごす時間も、案外良いものですよ。

畑で野菜で旬を感じるように、また海も季節によって景色が全く違い、そこにいるだけで季節を感じられるのもまた良いところです。

「きれいな海が目の前にある」「ゆったりと過ごす1日」塩を作る理由は、これだけで十分です。

そして自分で作った塩でお料理をすることは言わずもがな、最高の贅沢なのであります。
皆さまの暮らしの中でも、ぜひ一度「塩作り」を。

高知の里山で暮らす私の連載は今回で最終回となります。約1年に渡り連載を読んでくださった皆さま、ありがとうございました。これからも日々のあれこれは農園のInstagram@nakazato_naturefarmにて更新をしていきます。お時間ございましたら、ぜひのぞいてみてくださいね。
皆さまの日々の暮らしが豊かなものになりますように。高知の畑より願っております。
ありがとうございました。

中里早紀子

 

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