潮風薫る初夏の里山
連載:里山暮らし日々是好日
クラシライター:中里早紀子さんが自然や季節とともに移ろう田舎での里山暮らしの中で見つけたものたちをお届けします。
GWを過ぎると高知では日差しがグッと強くなり、急に夏感が増してきます。田んぼに映る太陽の光も眩しく、山の新緑と田んぼの緑が日に日に濃くなっていくのが分かります。
里山の緑も美しいのですが、目の前に広がる太平洋の青もとっても美しい季節なのです。こちらも太陽の光を浴びてキラキラと輝き、青のグラデーションも毎日変化をしていて、7年住んだ今でも見飽きることはありません。畑仕事がなければ1日ぼーっと眺めていられるくらい。
そんな海にこの時期波打ち際にわさわさ生えているのは、なんと「ひじき」!2年ほど前までは全く気付かず(というか知らず)ひじきだと分かったときには大興奮をしたことを覚えています。確かに、パックに入って売られている乾燥ひじきは知っているけど、どんな風になっているかは知らなかったのです。
というわけで、今回は「ひじき」が我が家の食卓に上がるまでの話し。
岩場の波打ち際をよく観察していると、2月頃に岩肌に小さなひじきがくっついているのがわかるのです。それがぐんぐん成長して4〜5月には大きなひじきに成長し、収穫できるというわけです。(一般的には小さい方が美味しいとされているらしく、国内での収穫は早いところでは2〜3月に行われるようです)
わたしの中での一番のポイントは、暦チェック!え!?そんなことが重要なの?と思われるかも知れませんが、波打ち際での潮位はとっても大事。干満の差が小さいとき、つまり干潮でも潮位が高いとひじきにはたどり着けないのです。
3月頃から月齢とタイドグラフを見て、大潮(潮の動きが大きい時で干満の差が一番大きいタイミング)の干潮時間を確認!ふむふむ、ランチタイムにマイナス3cmとか最高じゃないですかと、カレンダーに丸をつけてその日を待ちます。
日にちが近づいてくると、続いてはお天気チェック!ひじきは、採ったあとに湯がいて天日で干す作業があるので数日は晴れて欲しいところ。
そして、大潮とお天気がバッチリ合うタイミングで、いざ!海へ!サーファー横目に採集スタートです。
採集自体はとっても簡単。潮が引いた岩場にびっしりとくっついているので、根元を残してチョキチョキと鋏でカット。ほんの10分ほどで持ってきたカゴは山盛りになります。本当はこのままのんびりゆっくり海辺散歩でもしたいところですが畑仕事もあるので、早々に退散。
あとは古釘を入れた大釜で1時間ほど茹で、天日でしっかり乾燥するまで干すだけ。大釜に入れたひじきはさっと鮮やかな緑色に、1時間も経つと茶色くなり、干すと真っ黒なあのひじきになるのです。
荒波に揉まれ大きくなったひじきたち。美味しくないわけがありません。煮物も美味しいけど、手軽に楽しめる中里家の定番は「ひじきご飯」。ひじきの風味を楽しみたいので、味付けはなし!(潔く!)お茶碗によそってから、お好みで自家製塩をふりかけていただきます。
今回はちょっと体調が悪いため、おかゆにて。ご飯は昨年初めて自分たちで育てたもの、梅干しも昨年漬けたもの。ほっと心に沁み渡る美味しさです。
ふと思うこと。
里山で暮らしていると、お天気はもちろんですが、潮の干満や月の満ち欠け、太陽の動く位置や日の長さ、風の向きなど、あらゆる自然の要素を気にかけて過ごすことがとっても多くなります。これらは暮らしに直結してくる大切な要素。今はスマホ片手に何でも検索できてしまう時代、そんなものがなかった時代の昔の人は感覚を研ぎ澄まし、知恵や考える力を身につけ、もっと自然と対峙しながら生きていたんだろうなぁ。
ひじき採りを通して、そんなことを思い、色々と考えさせられた初夏でした。
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