ココヤシのおはなし
連載:シチシチムジクイ 島の暮らし
西表島在住のクラシライター:nijisuzumeさんより、自然の移り変わりや植物のサイクルに合わせたものづくり〈シチシチムジクイ〉をお届けします。
村の祭のムラングトゥ(村作業)の時に、浜の清掃と木々の伐採をしていた青年たちが、浜辺に生えているココヤシの木に登り、鈴なりに実っていたココヤシの実を山のように抱えて持ち帰ってきてくれました。
木の幹が真っ直ぐで足をかける枝の部分がなく、登ることが非常に困難なため、身近なところに生育している割に、なかなか手にすることのできない貴重なココヤシの実。ありがたく2つもらって家に持ち帰り、2つのココヤシの実のうち、1つは芽が出てくれたら良いなぁと思い、庭の畑の土の上に。もうひとつは、せっかくなのでココナッツとして食することにしました。
ココヤシの実をナタで割り、まずはココナッツジュースをと思ったのですが、実の外側は分厚い繊維のようなもので覆われていて、さらにその内側にある殻が硬く、ナタで割るのも一苦労。綺麗には割れず、欠けたような形で何とか割ることができました。
割ったココナッツの中は、透明なココナッツジュースで満たされていたので、コップに取り出して飲んでみることにしたのですが、甘くもなく、美味しいというわけでもなく、水?といった感じで、残念ながら想像していたのとはだいぶ違いました。
我が家ではスパイスカレーを作る際に、カレーの仕上げにココナッツミルクを入れたり、ココナッツフレークとニンジンのスパイス炒めをカレーに添えたりするので、硬い殻からこそげ取ったココナッツの白い果肉の部分から、ココナッツミルクとココナッツフレークも作ってみることに。
こそげ取った白い果肉の部分を、細かく刻んで水を加えてミキサーにかけ、布でよく搾ると、ココナッツミルクの出来上がり。ひとつのココナッツから、約500mlほどのココナッツミルクを搾りとることができました。
搾りかすである白く細かい果肉の部分も決して捨ててはいけません。こちらをフライパンで弱火で炒めて水分を飛ばすと、ココナッツフレークの出来上がり。
ちなみにココナッツの硬い殻の部分は、今回私の場合は、ナタでうまく割ることができなかったため細かく割れ、ヒビが入ってしまったのですが、パカッと真っ二つに割ることができたなら、お椀やお皿にもできたそうです。そしてココヤシの繊維質の表皮からは、繊維を採ったりできるそう。
無駄にすることなく全て生かすことのできるココヤシの実。でもそのように生かし切るためには、やはりどのようにして生かせばよいのかという知恵が必要です。その知恵がなければ、生かせる部分を捨ててしまうことになるかもしれません。そしてそれはココヤシに限ったことではなく、全ての植物に当てはまるのではないかと思います。そう言った意味でも知恵を身につけるということは大切なことなのだと身をもって感じます。
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