マトクのおはなし
連載:シチシチムジクイ 島の暮らし
西表島在住のクラシライター:nijisuzumeさんより、自然の移り変わりや植物のサイクルに合わせたものづくり〈シチシチムジクイ〉をお届けします。
島には幾つかの種類の竹が生えているのですが、そのうちマトク(真竹)と呼ばれるタケノコが出てくる季節は春ではなく、一年で最も暑い真夏の季節です。我が家の庭の端の方の森のようになっているところに、そのマトクの竹林があり、毎夏タケノコがニョキニョキと生えてきます。
マトクは、タケノコの収穫の仕方も独特で、地中に埋まっているタケノコを掘り出すのではなく、ある程度背が高く伸び、大きくなったタケノコを、ボキッと折って収穫します。
島に移住したての頃の私は、タケノコといえば地中に埋まったものを掘り出すものだということしか知らなかったのですが、
「あんたんとこの竹林はマトクが採れるさー」と言って、近所のおばあが竹林に一緒に入ってくれて、どのくらいまで伸びたタケノコが採り頃なのか、採りながら教えてくれた後、
「包丁持ってきな。こうやって拵えるよー」と
その場で包丁を片手に実際にマトクを拵えてやって見せながら教えてくれました。
おばあによると「マトク拵える時は、切れない包丁の方が上等!」だそうで、切れない包丁でも切り落とせるくらいの部分のタケノコが柔らかく、美味しく食べられる部分なのだそう。逆によく切れる包丁で拵えたものは、タケノコの繊維の部分が残ってしまい、食べた時に筋っぽさを感じてしまうそうなのです。
拵えたタケノコは、糠なども入れず、ただシンプルに水から茹でるのみ。我が家では、茹でた後のタケノコを茹で汁ごと冷蔵保存したり、冷凍したりしておき、必要に応じて取り出して、タケノコごはん、タケノコチャンプルー、魯肉飯、青椒肉絲などに使って、美味しく頂いています。
こんな風にタケノコの拵え方を教えてくれたおばあは今はもういないけれど、毎夏マトクを収穫して拵えながら、竹林の中で手取り足取り教えてくれたおばあとのことを、懐かしく思い出しています。
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