ピタンガのおはなし

2024.04.28
nijisuzume

連載:シチシチムジクイ 島の暮らし
西表島在住のクラシライター:nijisuzumeさんより、自然の移り変わりや植物のサイクルに合わせたものづくり〈シチシチムジクイ〉をお届けします。

 種を蒔いて大きくなるまで育てた、我が家の庭の片隅のピタンガの木に、数年前から少しずつピタンガの実が実るようになりました。春の訪れとともに、ピタンガの木には緑の可愛らしい実が鈴なり。


 4月も半ばとなり、アカショウビンが鳴き、月桃の花が花開き、島はうりずんの季節。ピタンガの実も一斉に赤く色づきました。
 アセロラとよく似たピタンガの実、アセロラの原種なのかと思っていたのですが、アセロラがキントラノオ科、ピタンガはフトモモ科、どうやら原種ではないようです。けれどもアセロラ同様で、甘酸っぱくて瑞々しい、ビタミンCたっぷりの美味しい南国フルーツです。


 そんなピタンガですが、人によっては「美味しくない」という感想を持つ人も。かくいう私も昔は「苦味とエグ味と強い酸味があってあまり好きではない」と思っていました。


 ピタンガを美味しく食べるための秘訣は、完全に熟した実を選ぶこと、なのでした。完全に熟し切ったピタンガの実は、軽く触れるだけでポトっと落ちます。見た目も少々赤黒っぽく、果肉の色味も透き通った感じです。その完熟ピタンガは、苦味もエグ味も強い酸味もなく「美味しい」のです。なので、ピタンガを収穫するときには、真っ赤になっているからと無理に採るのではなく、木を揺すって落ちるピタンガを収穫するのが良いです。


 島の友人のカフェ(ナナシカフェ)を訪れると、ちょうどピタンガのパウンドケーキというメニューがありました。話によると、やはりポトっと落ちてくる完熟のピタンガを使用しているとのこと。ピタンガの甘酸っぱさがいい具合にパウンドケーキと馴染み、ピタンガの少々のクセが、スパイスのように独特のアクセントとなり、とても美味しいパウンドケーキでした。


 ということは、ピタンガは焼き菓子に合いそう‥?ということで、ピタンガ入りのちんすこうを焼いてみました。


 少々クセのあるものが、焼き菓子には合うようです。煮詰めたピタンガときび砂糖と小麦粉とラードを混ぜて、平べったく焼いて四角くカットしただけの ピタンガちんすこう、不恰好ではありますが、とてもおいしく焼き上がりました。

 

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