里山からの春便り
連載:里山暮らし日々是好日
本日4月15日(月)より、月1回月曜日で新連載スタート♪
クラシライター:中里早紀子さんが自然や季節とともに移ろう田舎での里山暮らしの中で見つけたものたちをお届けします。
はじめに。
皆さん、初めまして。中里早紀子と申します。
この春から「クラシコサエル」での連載をスタートさせていただくことになりました。
のんびり月1回の更新となりますが、お付き合いいただけますと幸いです。
第1回目ということで、まずは簡単に自己紹介を...。
わたしは高知県にある海沿いの町「中土佐町」というところで小さな有機農業を営んでおります。家族は農園長とわたし、それから猫が1匹(もう1匹は脱走中)と、ヤギが2頭、鶏が15羽ほど。スタッフは1名、同じ町内に住む家族同然の女の子ややこちゃんです。小さな農家ですが、大家族です。
畑の目の前には太平洋、背後には緑の山並み、街灯がほぼないので夜には星空の広がる素敵な場所です。そんな集落で年間約50ー60種類の野菜を有機栽培という方法で育てています。
自然相手の仕事ということで日々苦労もありますが、何よりここでの暮らしを大いに満喫しています。農業も仕事というより、暮らしの一部分。
この連載では里山での日々の「暮らし」や暮らしを通して感じること・考えることなどを、四季折々の情景、高知の空気感をたっぷりに交えながら、お届けできたらと思っています。
ちなみに出身は兵庫県神戸市。そんなわたしが、なぜ高知県で有機農業をしているのか?はまたいずれ。
春は「美味しい」が渋滞する季節
高知と言えども、冬はしっかりと寒い。沿岸部に住むわたしたちの集落にも、何年かに一度うっすら雪が積もります。野菜の成長も、虫たちも、どこかのんびりスローペースで時間が動く冬。みんな春を待ちわびています。
それが、3月に入るとぱちんと音が聞こえるように、一気に春へのスイッチが入ります。太陽の暖かさ、風の匂い、野菜の花、鳥の声、虫の音。集落のおんちゃんたちも田植えの準備にそわそわ。みんな申し合わせをしているかのよう。わたしたちも春に置いて行かれないようにギアを上げます。
例年、まずはふきのとう探し。なのですが、今年は菜種梅雨の影響もあり畑作業が少し遅れ気味、山には入れず年に1回のお楽しみを逃してしまいました。。。号泣
こちらは遅れまい!と4月に入り、日本ミツバチの巣箱を設置。今はまだ空っぽの巣箱ですが、ミツバチが入居してくれるとせっせと巣を作り(蜜を運び入れ)、近い将来蜂蜜が収穫できるというわけです。入居してくれるかどうかには、ハチたちの厳正なる審査があります。日当たりや見通し、外敵がいないかという安全性、蜜源からの距離などが審査されるのです。
桜前線と共に北上するかのように、各地でミツバチの「分蜂(ぶんぽう)」が始まります。ひとつの家族で生活をしていた所に女王バチがもう1匹誕生し、新しい家族を形成、元々いた女王バチたちの家探しがスタートするというわけです。うちの巣箱は好条件で3部屋ほど某住宅情報サイトに掲載をしているのですが(笑)果たして!?気長に契約を待つとしましょう。
もう一つは、たけのこ掘り。たけのこが収穫できるのは、ほんの2週間ほどです。わたしたちはこの時期にしかたけのこをいただきません。旬を味わう楽しみ、これは格別なのです。
まずは宝探しのように、地面からちょんと出ている穂先を探しあてます。それから、たけのこを折らないよう「砂山くずし」の要領で周りの土を取り除いていき、おおよそのたけのこが顔を出したところで、えいっと根元からツルハシで収穫。あっという間に袋いっぱいに収穫できます。が、ここでは「足るを知る」、自分たちで食べる分と少しのおすそ分け分だけを収穫します。
掘りたてのたけのこは、薪火のストーブでふつふつと1時間ほど炊きアク抜きをします。米ぬかがなくても、白米でも十分アク抜きできます。たけのこご飯にしようかな、煮物もいいなぁなんてあれこれ妄想をしながら約1時間、アク抜きをしたあとは冷たい水へ、しっかり冷やして保存します。
あら。気がついたら、食べることばかり。そんな里山の春です。
高知へ来た頃はこんな贅沢を知りませんでした。豊かな旬は意外に身近にあるものです。いつでも何でも手に入る便利な時代ですが、寒い冬を越え、春の美味しさを見つける喜びは唯一無二なのです。
そういえば、そわそわしていた集落のおんちゃんたちも晴れ間を見つけて田植えを終えたようです。カエルの大合唱が始まると、高知の初夏はもうすぐそこ。あっという間ですね。
それでは皆さん、良き春の日をお過ごしください。
4月の読みもの4月の食に関すること(レシピ付き記事も)、4月の過ごし方のアイデアや5月の準備などの記事をお楽しみください♪ |