浜下りのおはなし
連載:シチシチムジクイ 島の暮らし
西表島在住のクラシライター:nijisuzumeさんより、自然の移り変わりや植物のサイクルに合わせたものづくり〈シチシチムジクイ〉をお届けします。
旧暦3月3日(今年は4月11日)は、浜下り(ハマウリ)の日です。昼の干潮の時間に合わせて家族で海に出かけられるようにするため、地域の学校では、授業は午前中だけで終わり、子どもたちは給食も取らず嬉々として早々と下校します。
この浜下りという行事は、今では家族や友人たちで潮の引いた海に出かけ、潮干狩りを楽しむ行事となっていますが、本来は女性が海浜に出かけて手足を海水に浸して身を清める、女性の健康を祈願する行事でした。
浜下りの日の午後は、昼過ぎから夕方までの間にかけての時間帯に、大きく潮が引きます。いつもの海の様子とは一変し、普段泳いでいるような場所が干上がり、陸地となります。
潮が引くことにより、あちらこちらに潮溜まりができます。そのおかげで、普段は海の中にいてシュノーケルをして潜らなければ見ることのできないような、カクレクマノミのような魚や、海の生き物たちを、海に潜ることなく、水面を覗き込むようにして、間近で見ることができます。
カクレクマノミ / ギーラ(シャコ貝)
ウニ / ウツボ
ウムズナー(小さい種類のタコ) / シャコ
潮の引いた海を歩きながら、島に来た当初、近所のおばあに「浜下りの日なのだから、さっさと海へ行って、手足を海水に浸すだけでもいいからしてきなさい!でないと蛇の子どもを産むよ」と怒られたことを懐かしく思い出したりしました。ひな祭りだからと、フーチバを入れて拵えた緑色の餅と、白とピンク色の餅を重ねて作った菱餅を作ってもらったことなども。
夕方に近づくにつれて、少しずつ潮が満ちてきます。海の向こうに取り残されてしまっては大変なので、ほどほどにして戻ります。
浜の方まで戻ってきてから、砂浜の砂を掘って、その日の夕ご飯のお味噌汁に必要な分だけハマグリを採って、家路につきました。
必要なものを必要なだけ。
海も山も同じです。
その恵みに感謝しながら。
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