本蕨餅で涼を納る

2023.08.17
早織

連載:折々の一皿
クラシライター:早織さんより、旬を取り入れた、和の要素を感じられる自宅でのお料理やおもてなしについてお届けします。

暦の上ではもう秋だとは信じられないほどの厳しい暑さ。こうも暑いとつい早く涼しくならないかと思ってしまいますが、残り僅かな暑い日々も涼を感じる工夫を凝らして楽しみたいものです。


見て、食して、涼を感じられる和菓子と聞いて思い浮かべるものは何でしょう。






今日の一皿は本蕨粉で作る蕨餅です。


春から初夏が旬の山菜、蕨(わらび)。
その蕨の根の澱粉を抽出し乾燥させた薄灰色の本蕨粉はおよそ10kgの蕨から僅か10gしか取れず、手間暇かかる大変貴重なものです。


蕨餅というと透明なものを思い浮かべる方も多いかもしれませんが、他の澱粉を混ぜず、本蕨粉と砂糖、水のみで練り上げる純度100%の本蕨餅は黒く艶やかで蕨本来の香りを楽しむことができます。


本蕨粉が貴重なこと、出来立てが最も美味しく、その美味しさを保つ時間が短いこともありお店ではなかなかいただくことの出来ない本蕨粉のみの蕨餅。家族や友人と集まって過ごす日に出来立てを皆で味わうのはいかがでしょうか。






 

*材料*

本蕨粉:100g
甜菜糖又は黒糖:140g
水:500ml
きな粉:適量



*作り方*

1.
流し缶に茶漉しなどを用いて薄くきな粉を振っておく。

2.
ボウルに本蕨粉を入れ、少しずつ水を加えて混ぜる。水を全て加え底までよく混ぜたら、鍋へ濾して移す。

3.
砂糖を全て加え溶かす。

4.
強めの中火にかけて木べらで混ぜ、少し重くなってきたら弱火に落として休まず混ぜ続ける。

5.
重くなってきたら、鍋肌に当て練るように混ぜる。
※底から掬って返すように混ぜると粘り気が出にくくいです。

6.
強い粘り気が出て、生地が透明になり艶が出てきたら1の流し缶に流し入れる。

7.
常温で粗熱が取れるまで置き、完成。


⚪︎ 出来立てをそのまま食べるも良し、食べる直前に少し冷蔵庫で冷やすも良し、お好みでどうぞ。冷やしすぎると食感が悪くなるため気をつけてください。

⚪︎ 関東ではさらに黒蜜をかけていただくとのこと。黒蜜をかける場合は砂糖の量を調節してください。

⚪︎ 流し缶を使わず、バットにきな粉を敷きその上に鍋から移し、きな粉をまぶしながら一口大にちぎって丸い形にすることも出来ます。








涼やかな見た目にひんやりとした口触り。お盆に露を打ち、涼を感じる演出をしてみました。







手間暇かかる貴重で高価な本蕨粉。今年は取れた量が少なかったようで、例年扱っているお店で欠品が相次いでいるようです。もし見つけることができたら、今年はさらに貴重な本蕨餅をぜひ試してみてください。








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